...2005/03/01(tue) No.557
映画:『君に読む物語』 |
映画:きみに読む物語 劇場:セントラルムービー(上野) 同行:なし
一人の老人男性が、介護施設にいる老人女性にある若者の恋物語を読み聞かせる。それは一人の男性が一人の女性と出会った夏から始まる・・・て感じのお話。
物語を読むように話が進んでいくために時間の経過は早いけれど、一つのシーンをゆっくりと時間をかけて描いている。非常にゆったりと感じる映画。おじいさんが物語を朗読しているという設定からも時間の流れが緩やかに感じるのかもしれない。
自分の惚れた女性に対して一途に思い続け、行動し続けられる姿には憧れを覚える。返事のない手紙に対して一年間毎日一通の手紙を書いたり、戻ってくると信じて彼女の希望を取り入れた家の手入れをしていたり。ひたすら戻ってくることを信じ続けるその姿は素敵に見える。 ・・・でも、別の女性と体だけの関係は持つのね(汗)
物語中で、恋人に対して自分か婚約者かを選ばせるために『婚約者でも、両親でもない、君がどうしたいかだ』というシーン。どんな選択をしても誰かが不幸になる。それなら自分が一番したいようにすればいい。そういう選択を実際にできる人なんて滅多にいない。やっぱりかかわっている人のことを考えてしまうし、自分の将来がかかった事だって自分だけのことを考えられる人なんているのだろうか。 そんな中恋人に対してそういうことを言える姿は格好よい。母親とは違う選択をした彼女は結局後悔なく人生を送る事ができたのだろうか、それとも違う選択をしてもやはり後悔をしてしまったのだろうか・・・
ネタバレ→ 自分が語る物語をキッカケに過去の記憶を取り戻し、二人の過去の時間が戻ったのもつかの間、あっという間にそれまでの記憶も、そして自分を抱きしめていた相手さえも忘れてしまう。単に忘れてしまうだけでなく、思い出した瞬間に忘れてしまう、その瞬間を目の前で見ている辛さは見ているほうの心が痛む。 それでも一番最後の結末で二人が手をつないだまま一緒に天に召される、一人の男性が一人の女性を愛し続けた末の顛末として確かに良い形かもしれない。でもやっぱり最後、一方的に爺さんが婆さんのところに行くんじゃなくて、二人の気持ちが通じ合った状態であって欲しかったなぁと個人的に思う。あのラストはいったい誰にとってのハッピーエンドだったのだろうか。
きみに読む物語。この物語は一人の老人男性が認知症である老人女性にある物語を読む。その物語はその女性自身が書いた自分たちの物語という構成。 女性が書いたのは自分たちの間にあった本当の話というように描かれているが、実はコレ彼女自身が脚色して美化した話なのではないだろうか。たとえば『観覧車のポールにぶら下がり片手を離す』という行為が実は『観覧車の中から飛び降りるフリをする』だったり、『毎日1通、一年間で365通の手紙』が実は『毎週1通、一年間に52通の手紙』だったのかもしれない。 冒頭で老男性が『私はどこにでもいる平凡な男だ』というくだりで入るにはあまりにも突飛な行動をしている若かりしころのこの男性。この物語には死ぬ間際に振り返る思い出くらい自分のしたかったように、脚色して美化して思い返そう・・・というテーマが込めているのでは・・・と思うのは勘繰りすぎかな・・・。 ネタバレここまで
テンポが遅めで割りとゆっくりと流れる一つ一つの時間。語りながら自分の若い過去を振り返る、そんな物語は割りと高年齢層に向けた映画のような感じ。 でもなんだかんだで婚約者は可哀そう(笑
『きみに読む物語』は7(/10)点
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